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『人魚の眠る家』:映画:あらすじ:解説

更新日:2021年12月26日

東野圭吾の同名小説を原作に「SPEC」シリーズや「池袋ウエストゲートパーク」の堤幸彦監督が映画化した名作。愛娘が不慮の事故により意識が戻らなくなった夫婦の人生が狂っていく。人間とは、命とは何か。

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Netflixオリジナルシリーズ「金魚妻』で話題の篠原涼子、テレビドラマ「真犯人フラグ」が注目される西島秀俊、この二人が表現する狂気と家族愛のストーリー。

今回は人間の根本に触れる、感想を一口で言い表す事など不可能な程に深い作品を紹介する。




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【あらすじ】


播磨薫子(篠原涼子)は二人の子を持つ母親だが、IT機器メーカー社長である夫・和昌(西島秀俊)とは別居中。娘・瑞穂の小学校受験を期に離婚する予定だった。そんなある日、プールの事故で瑞穂が意識不明となってしまう。医者から意識が戻ることはないと診断され、夫婦は苦悩の末に臓器提供を決断する。しかし、一瞬だけ瑞穂の身体が動く様を見た薫子は直前になって提供を拒否し、延命を選択。和昌の会社の研究員である星野(坂口健太郎)が進めるとある研究に最後の望みを託す…。



愛する子供の健康と未来が突如として奪われ、やり場のない悲しみにくれる主人公達。家庭を持つ人や身近に子供が居る方であれば目を覆いたくなるような、日常的で避けようのない事故から始まる家族の物語だ。そして母、薫子が選んだ道は周囲の同意など得られない険しく狂気に満ちていた。しかし、自分の大切な誰かが同じ状況になった時に、あなたは薫子の行動を完全否定出来るだろうか。意識が戻る可能性が極めて低いとされていても、目の前で息をしている娘の命が終わったと、受け入れる事が出来るだろうか。


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【登場人物:キャスト】


播磨薫子:篠原涼子

┗和昌と結婚した二児の母。しかし和昌の浮気が原因で精神状態が不安定に。

 離婚の意思があった中で娘が事故に合い意識不明となってしまう。


播磨和昌:西島秀俊

┗薫子の夫。IT機器メーカーの社長。家族に関心を持たない仕事一筋な人間だったが、

 突如襲った娘の悲劇に肩を落とす。そして狂っていく妻に困惑していく。


播磨瑞穂:稲垣来泉

┗和昌と薫子の長女。6歳の時にプール事故で脳死判定されるも、植物状態で薫子に介護されながら生き続ける。


星野祐也:坂口健太郎

┗和昌の会社で働く研究員。障害者をサポートする最先端BMI技術を駆使し、眠ったままの瑞穂の身体を動かせるように。


川嶋真緒:川栄李奈

┗星野の恋人であり婚約もしている。星野が研究にのめり込む姿を見て心配する。


美晴:山口紗弥加

┗薫子の妹。瑞穂の介護を手伝いながら、姉を心配している。


新藤:田中哲司

┗瑞穂を担当する脳外科医。


千鶴子:松坂慶子

┗薫子の母親。自信が連れだした先で瑞穂が事故に合った為、強い責任を感じている。



「アンフェア」などで有名な篠原涼子が演じる薫子は突如として訪れた娘の脳死という事実を受け入れず、その言動は周囲から次第に人が離れていってしまう程。だが、彼女の想いや行動は全て子供への愛情だった。作中では言葉では表せられない程の感情を見事に演じている。クライマックスに近づくにつれて薫子の心が壊れていく様は、とてもフィクションだとは思えないような仕上がりになっている。

一方で「真犯人フラグ」でも主演を務める西島秀俊は、原作の和昌よりも優しく良い父親のように映る。これが対比となり、薫子の狂気が際立つ見せ方をしているのだろう。

また周囲を固める役者たちも、薫子に対して一概に間違いだと指摘できない葛藤や苦悩を上手く描いた作品となっている。


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【原作】


東野圭吾:『人魚の眠る家』(幻冬舎文庫)


2015年発行、デビュー30周年記念作品となる今作。東野圭吾といえば『ガリレオ』シリーズや『マスカレード』シリーズなど、ミステリー作品において映像化されていない作品がないほど。誰もが読みやすい文体と斬新なテーマでファンを魅了する超人気作家だ。

今作においては、非常に扱いずらく難しい家族の「脳死」を主軸に、家族の愛情と苦悩を見事に書き上げている。




【みどころ】


テーマは『家族愛』だろう。不慮の事故により突然植物状態となってしまった娘を、「生きた人間」として接する事がどれほど難しい事なのか。周囲の理解も得ずらく、かと言ってこれを止める正当な理由など存在しない。それ程までに一言では表現できない重厚な作品に仕上がっている。

特に薫子の豹変ぶりやその行動に心を痛めるシーンが数多く存在する。その中でも終盤シーンにおける薫子のセリフは一見すると狂気の沙汰であるが、その一言に込められた娘への深い愛情を感じさせる言葉でもあるのだ。

もう目を覚ます事は無い、しかし心臓は動いていて呼吸もしている。だから、瑞穂は生きている。視聴者が自分に置き換えて考えた時には、きっと薫子の狂気とも取れた言動に共感してしまうだろう。


そして、物語が終わるまでに幾度となく流すであろうその涙の理由は、決して悲しみだけではない。苦悩や葛藤、口にするのは難しい程の複雑な感情で溢れてしまうが、一つだけ伝えられることは、この物語が「愛」に溢れた作品だという事だ。


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【おわりに】



作品自体が扱いづらいテーマであり、悲劇を好まない人にとっては視聴を避けてしまう作品なのかもしれない。私もそうだった。あらすじを書いているだけでも涙が溢れてしまう程。しかし、一つの物語として観る事が出来たのならきっと最後は優しい感情に満ちているのではないだろうか。不幸な家族ではあるが、その中で生まれた愛情に偽りはなく短くも儚い幸せがそこに存在していたのだ。皆さまも是非、大切な人を思い浮かべて、日常や普通の幸せを改めて見つめなおす作品に触れていただきたい。



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